強い苛立ちと憎しみを、深い呼吸と、どこか一点を見つめ この子さえいなければ 、この子さえいなければ 、そう唱えることで鎮めていた。抜け殻の私は、寝る気のないタロウと添い寝をしていた。
タロウは布団の中に入っても王様気取りだった。 毎日、特に夜。タロウは
「○○食べる(飲む)」
「△△(ビデオ等)観る」
「やだ」
思うがままに生き、言うことは一切聞かない。
タロウは「無い」「駄目」が聞けない。そういう脳のタイプなのはわかってる。でも、答えはそれしかないのだ。朝から晩まで気の利いた対応なんてやってられない。 布団に入る前、私より先に母がタロウにキレた。
私もつられてキレた。
タロウはキレられて当然のことをしている。 ちょっとのことでは苛々しないとこまで成長してたはずの私は、最近タロウに対しては誰よりも短気だ。年始に抗うつ剤をやめたからかもしれない。
ふっ、薬の力かよ。
ふとタロウを見ると、布団に誘っておきながら隣の部屋のテレビを観てやがる。私はむかついて頭を叩いた。
号泣した。だったら観るな!
散々泣いた。
もうめんどくさいからタロウの言いなりになることにした。
怒りと憎しみを隠し、優しいふりをした。
タロウの瞳が焼けそうなほど睨んだ。 脳のタイプだか何だか知らないけど、私はもうこんな子嫌なんだよ!
号泣ぐずりかんしゃくという武器を持つ独裁者め!
楽しみを全て奪われ、気をつかい、褒めおだて、本来の私を殺した生活。
あなたの居なかった時代に戻りたいわよ!
私に平和を返してよ!
私が薬という形でリセットボタンを押すのではなく、タロウ、君がリセットして。
ママのことが好きなら、今の生活リセットしてよ!
ニュースで幼子二人を殺してしまった母親が、○○容疑者と呼ばれていた。
私は頑張ってまじめに生きてきたのだから、容疑者なんて呼ばれたくない。
殺すなら私も一緒がいい。
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