拳をぎゅっと握り締めると、爪が掌に食い込んだ。
できることなら、タロウを金づちで叩き壊したい。
殺したくも傷つけたくもないけど。矛盾してる。でも、この私の憎しみはどう処理すればいいのだろう。
悔し涙を流さない癖がついた私の、本来流れるはずの涙は、一体どこへ行くのだろう。
ダンナとプラレールを買う買わないでもめて疲れたタロウは、プラレールを買うのを見届けると、ダンナに抱かれて寝てしまった。
ベンチで約30分寝かせ、起きてからアリスを再チャレンジした。
アリスに入るなり『泣き止まないタイプの泣き方』をした。プラレールで釣ってもダメ。店員さんも頑張ってくれたがダメ。
どうしようもなくて諦めた。 タロウと同じ年頃の衣装を着た男の子が、タロウをずっと見ていた。
そうだよね、こんなに泣くなんて不思議だよね。変だよね。 店員さんにお詫びとお礼を言った。
私は今まで、何度タロウのことで何度お詫びをしたことだろう。 アリスを離れるなりご機嫌なタロウに、余計にムカついた。
プラレール、無駄遣い。いい子じゃないタロウばかりご褒美貰ってる。
家に帰り、私はタロウに何度もチュウをねだった。今日は唇にしてもらった。これはお仕置き。
許すきっかけ。 そして、ポジティブダンナが私の気持ちを受け止めてくれた。 私は普通のことをしたいだけ。
普通に親馬鹿になりたいだけ。我が子をヒーローにして。 普通に人にいばりたいだけ。
ブランドの小物を持つように。 結婚するなら結婚式を挙げるのが普通なのと同じ位、アリスは普通だと思ってた。
我が子を持った特権だと思ってた。 アリスをまだ諦めきれない私は、子供に理解のない親なのかな。
タロウを苦しめてるかな。
コメント